科学の光で照らそう

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 高輝度放射光施設(Spring-8)の施設公開に行きました。

New SUBARU
 New SUBARU(ニュースバル)放射光施設棟

 今年は昨年に行けずに悔しい思いをしたニュースバル放射光施設の見学ツアーで中を拝見させて頂きました。
 ニュースバルは兵庫県がSpring-8の敷地内に設置された放射光施設で、共用の直線加速器(LINAC)で1.5GeVに加速された電子塊(バンチ)を利用して独自の蓄積リングで放射光を発生させて利用するための施設です。
 発生させる放射光は軟X線から極短紫外線の範囲でSpring-8の硬X線での運用に対して相補的な利用が出来るようになっています。

電子ビーム分岐部
 電子ビーム分岐部
 右側に延びる建家がニュースバル向けの導入路
 中央のかまぼこ型の建家が直線加速器棟
 左側は8GeVへ加速するためのシンクロトロン

 LINACで加速後写真右側に延びているトランスポートトンネルを通って電子バンチはニュースバルに導入されます。

電子ビーム導入部
 電子ビーム導入部
 向かって左側から導入される

蓄積リングの一部
 蓄積リングの一部(外観)

 蓄積リングは2カ所に14mの直線部があるレーストラック型というユニークな形状をしていて周長は118.731mあり、1.0GeV〜1.5GeVのエネルギーで電子を蓄積することができます。

電源群
 電源群
 右奥の巨大な筐体がクライストロン用インバータ電源

 蓄積リングの内側スペースには装置類への電源などが設置されています。
 通常クライストロンは放電時の保護のためにコンデンサーを用いた巨大なクローバー回路を必要としますが、ニュースバルではインバーター電源を用いる事でこれらを省略し、効率化・小型化をしています。

高周波加速空洞
 高周波加速空洞

 蓄積リングで放射光を出した電子はエネルギーを失いますので、それを補填するために高周波を使って加速を行います。ニュースバルの周長118.731mに対してバンチの総数198個を管理しますので高周波加速器の発振周波数は499.955MHzとなり、加速された電子は蓄積リング中を1周396nsで周回します。

用周期可変アンジュレーター
 自由電子レーザー用周期可変アンジュレーター
 BL1a/BL1b/BL2

 挿入光源(アンジュレーター)は永久磁石を使い放射光を得る事が多いのですが、こちらでは波長調整範囲を広く取るために永久磁石ではなく電磁石によるアンジュレーターがあります。
 ここで得られるコンプトン散乱によるガンマ線を用いて長寿命の核廃棄物処理の研究が行われており、実際にビームラインでは原発事故での回収土壌を封じ込め・保管する容器の評価試験を行っていました。

長尺アンジュレータ
 長尺アンジュレータ
 BL9/BL10

 またニュースバルではSpring-8に次ぐ世界有数の長さをもつ長尺アンジュレータが設置されており、11mの永久磁石型アンジュレータが導入されています。
 長尺アンジュレータによって得られたコヒーレント性の高い軟X線によりナノメータ以下の測定を行うミラー形状測定技術を開発しているそうです。

ビームライン測定部
 ビームライン測定部(BL5A)

 写真の測定部はビームラインBL5のもので、産業分析用ビームラインとして運用されていて、物質・材料を構成する元素の化学状態・結合状態・隣接原子との距離などが解析でき、物性分析ができます。

 ニュースバルはSpring-8の連続終夜運転と違い、運用時間を企業利用者向けに合わせているため9:00〜21:00となっています。企業利用者が泊まり込みでの外部施設での測定というのは難しい側面があり、このようになっているとのこと。
 また、電子バンチはSpring-8が優先されるため、LINACで加速した電子をニュースバル向けに振り分けてもらうのに待たされる事も多く、運用に苦労しているようでした。

 ニュースバルでの産業利用を促進するため放射光施設を利用した分析を受託する組織としてシンクロトロンアナリシスLLCという会社を立ち上げ、先の写真にある産業用ビームラインを活用して新しいビジネスを目指しているそうです。

 学術・研究利用の大型放射光施設であるSpring-8に対して、ニュースバルはこじんまりした分、小回りを利かせて多様な用途を提供して産学連携の放射光施設を目指しているようです。

 Spring-8もそうですがニュースバルも1999年の運用開始から10年以上経過し、経年劣化による施設や設備、機器類のほころびがいろいろ出ているとの事。ニュースバルは小回りが利く分、施設更新をこまめに行っているようですが、Spring-8はなかなかそうもならずアボートしないものの運用の補修・保守には苦労しているとお伺いしました。
 成果を上げているのですから、もう少し科学振興予算を突っ込んでも良いのではないかと思います。少なくともこのクラスの第3世代大型放射光施設は世界で3カ所しかなく、X線自由電子レーザーであるSACLAやニュースバルなどの複合施設として運用できるのは世界中探してもここだけです。
 日本の次世代科学技術や産業技術のためにも頑張ってほしいものです。

 余談ですが、Spring-8でのお話。
 関西電力の電気代値上げでかなり苦労させられているとのこと。なにせ運用時最大36,900kWを消費します。設備更新や入替で省エネになる機器へのリプレースなどで節約に頑張っていらっしゃいました。ちなみに年間電気代は19億円(平成21年度実績)だそうです。

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