迷走本棚

夏はロケット

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 宇宙ものというかライトノベルというか。

ほうかごのロケッティア
 大樹連司著 小学館刊 GAGAGA文庫
 ほうかごのロケッティア
 SCHOOL ESCAPE VELOCITY
 2009年12月23日 初版第1刷発行
 ISBN978-4-09-451178-9

 まず、ライトノベルです。あまり細かい事は気にしないで読みます。
 本人が言及していますが、以前に紹介した川端裕人の「夏のロケット」、あさりよしとお(浅利義遠)の「なつのロケット」、のほかにも野尻抱介の「ロケットガール」やGAINAX「王立宇宙軍 オネアミスの翼」を下敷きにして描かれた世界観、ストーリーとなっています。
 副題は脱出速度「escape velocity」に掛けて、学校脱出速度とということでしょうか。

 本編は好き嫌いが分かれると思いますが、ライトノベルで青少年向けということもあり、厨二病的な台詞回しが多数使われています。大体ヒロインがツンデレですし。
 「腐女子」「リア充」「電波」とか、もろ「厨二」という言葉も使われます。2ちゃんねるファンでしょうか(笑)。
 ロケットはモデルロケットからスタートする正攻法ですが、大型化するのに伴いコンポジット燃料を使ったものになるあたりは夏のロケットと同じ。実際に軌道投入を行うロケットについては多段となりますが、なんとハイブリッド燃料のロケットになります。で、現状のハイブリッド燃料ロケットの成績としてははなはだ良くないのですが、そこはフィクションで(秘密の)特殊な触媒を導入することにより成功へと導かれます。このあたりはハッピーエンドへ向かうための隠し味でしょう。

 残念な点が二つ。
 ロケットにかかわった人間としては負の歴史とも言える人間ロケットミサイルである「桜花」が登場すること。戦争の一ページとしてのみ描かれて、ロケット開発者としてはやってはいけないことに手を出したという悔恨の印象が薄いのです(もちろん桜花は当時の軍部が主導したのですが)。エピソード中の桜花に搭乗して亡くなられたという人物がロケット開発をしていた人間であるという点を除いたとしても、ロケット技術者のタブーに触れたという文章ではありません。
 もうひとつは、主人公がオタクとしてバレることでクラスメイトから相当にいじめられる描写があります。「いじめ」は単なる人間関係の歪ではありません。万引きを窃盗と呼ぶように、いじめは器物損壊を始めとしてはっきりとした犯罪行為であり、許されないものです。その点について、いじめる側の立場から見た論理が広げられ、いじめる側のいじめる行為に対する処罰やその責任を取らされるシーンが全く無く、いじめ行為はいじめれる側に理由があるかのごとく描かれた部分が大変残念でした。
 作者の年齢もあるのでしょうが、若い人から見た世界がそうなのかと思わせられます。

 総じて軽い文体、学生同士の会話主体の文章ということもあり、一気に通読しました。
 エンタテイメントとして十分楽しめましたが、いまいち後味の悪い部分が残ったのが残念です。
 参考文献がなかなか面白いのも、面白い点でしょうか。

青色発光ダイオード

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 またもや青色LED関連の書籍です。

青色発光ダイオードは誰のものか

 日刊工業新聞社 B&Tブックス刊
 谷光太郎 著
 青色発光ダイオードは誰のものか
 〜世紀の発明がもたらした技術経営問題を検証する〜
 2006年1月30日 初版第1刷発行
 ISBN4-526-05573-5

 著者は三菱電機の半導体研究所(当時国家プロジェクトだった超LSI技術共同研究組合の研究所が設置されていた)にも勤めた現場の人。
 いうなれば半導体開発のかつての現場にいた立場から、青色発光ダイオードの成功の経路を検証しようと言う見方で記された本です。

 しかしながら、前半に大きく占められた特許報奨金への企業と発明者個人との訴訟事例が導入部とはいえ、タイトルからは離れた内容になってしまっています。中村修二が特許係争をしていることに重きが置かれ、誰がどのような経緯で青色発光ダイオードの実現に至ったかの部分はさらりとしか書かれていません。
 その点、青色LEDは誰が創ったかで紹介したテーミス編集部編「青色発光ダイオード」や、青色の一人で紹介した「青色発光デバイスの魅力」の著者であり窒化ガリウムで青色発光を実現した本来の青色発光ダイオードの発明者である赤崎勇の言、さらに青色にまつわるで紹介した中島彰による「「青色」に挑んだ男たち」は取材などを丁寧に行い、当時の開発者(本人が著者でもある書籍も)や現場を指揮した人たち、同僚研究者、当時の発明の元となった研究を行っていた研究者などの言葉を交えて構成されており、いきさつなどを知る事が出来ていたのですが、どうもこの本は勝手が違います。

 本文中、だれそれがこう言った的な引用で同じものが何度も繰り返して登場。ページを置かずしてまた出てくる、という箇所が何カ所もある上、この内容は何度登場するのか数えたくなるぐらいのものもあり、かなり辟易させられました。
 今回読んだこの書籍では、ほとんどインタビューをせず、他人の記した書籍や記事などから情報を寄せ集めて、はっきりとした結論も出ないまま巻末に至ってしまっているという印象は拭えません。「いったい誰が発明者と言えるのか」という点については曖昧なままで、著者のはっきりとした結論が見えてきません。

 どうも、もやもやの残る一冊でした。
 「技術」ではなく「技術経営問題」を検証するということですので、こちらの読みたかった目的と違う書籍だったのでしょう。

PC-9801

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 この文字列を見て記憶が呼び覚まされる人は多いのでは。

PC9801伝説
 アスキー書籍編集部編 株式会社アスキー刊
 月刊アスキー別冊 甦るPC-9801伝説 永久保存版
 2004年4月1日 初版発行
 ISBN4-7561-4419-5

 メーカは当初それほど爆発的な人気が出るとも思っていなかったそうですが、驚異的な2000万台近くの販売台数を誇り、現在も形を変えて使われている日の丸PCであるNECのPC-9801にまつわるさまざまなエピソードなどを、当事者インタビューなどを含めてまとめあげたのがこの本です。
 付録にCD-ROMが付いており、いまのPCであるWindowsマシンでPC-9801のソフトを使うためのエミュレータおよびおまけのソフトなどが同梱されています。エミュレータを使用するにはPC-9801のROMイメージが必要なので、なんらかの形でPC-9801が必要なところが問題ありかも知れませんが。

 インタビュー記事に登場する人物も蒼々たるもの。
 当時NECでPC-9801の開発を指揮した浜田俊三を始めとし、商品化担当だった小澤昇、アスキーから華麗な転身を遂げたマイクロソフト株式会社初代代表取締役の古川亨、一太郎で名を馳せたジャストシステムの浮川和宜など(敬称略)。
 その他、なつかしのゲームのレビューや、発売全機種のスペック一覧表なども郷愁をそそります。そうそう、当時ファンの多かったと思われる鷹野陽子の「Yoのけそうぶみ」もあります。こちらは書籍化されておりますが現状絶版。

 一番の楽しみとしていたのが、袋とじにもなっている月刊アスキーのパロディー版(4月1日に発売されていた)である別冊の年刊AhSki!が笑かせてくれます。1982年版の復刻ですが、本誌記事のパロディだけでなく、取材記事や広告まですべてパロディ。
 BYTEならぬKYTEやDDJ(Dr Dobb's Journal)はDr. Donguri's Jungleですし、YAMAHAはNAHAHAと凝りまくり。
 読者の声を紙面で紹介する「DirectMailArea」(Direct Memory Accessに掛けている)が「Direct Male Area」(ダンナの愚痴)、「ちょっとイイプログラム」は「ちょっといいボログラム」に、「TBN(Tiny Basic Newsletter)マイコンなんでも相談室」は「TBNマイコンなんとも相談室」とかなり真面目に作ってあります。
 AhSki!は2004年度版も収録されており、付録にPC-9801の1/6ペーパークラフトがついています。
 紙面はパロディですが、掲載プログラムはちゃんと動くところが真面目(プログラムは真面目ではありません)です。ただ、南青山アドベンチャーや、表参道アドベンチャーはバグがあり、そのせいで苦労した人が多かったとか。

 パロディ版ア・スキーはただ働きアルバイト募集とのことですが、次を出すなら仕事を放り出して応募したいところです(笑)。

記憶が飛ぶ

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 どうやって帰ったか判らない...は、さすがにありません。

記憶がなくなるまで飲んでも
 川島隆太・秦羅雅登著 ダイヤモンド社刊
 記憶がなくなるまで飲んでも、なぜ家にたどり着けるのか?
 2007年11月29日 第1刷発行
 ISBN 978-4-478-00082-9

 飲んで記憶が無くなったようですがどういうわけか家に着いている。どうやら玄関の鍵も開けて風呂に入って寝たようですが、どうして家にいるのかわからない。家に着くまでの記憶が無い。どこをどう通って帰ったかさっぱり判らない。どうしても思い出せない。

 さすがにそんな体験はありませんが、飲むと脳の機能が正常に働かなくなるので記憶の機構がうまく動かなくなり見たこと聞いたことなどが思い出せなくなっている状態になるそうです。
 しかし、どうも頭の中には手順を自動化して帰るためのナビのようなものがあるらしく、それが断片化した記憶の状態の中でも家へたどりつけさせてくれるとの事です。

 その他、飲むとどうなるかとかの最新の知見などからいろいろなことがエピソードを交えて面白く紹介されています。ちなみに著者の一人である川島隆太氏は脳トレで有名です。
 酒を飲む人、飲まない人、どちらも楽しめる一冊でしょう。

混沌の時代

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 日経バイト(アルバイト募集雑誌ではない)に連載されていた名コラムです。

混沌の館にて
 ジェリー・パーネル著 日経BP刊
 ジェリー・パーネルの混沌の館にて
 2004年10月12日 初版第1刷発行
 ISBN4-8222-0664-5

 海外雑誌の同名雑誌「のようなもの」を多数発行している日経BP社による、日経バイトに本家の米国BYTE誌にも連載されていました同名コラム(本家ではUser's Column)翻訳版として連載されていたものです。
 その間の1985年〜2004年のコラム記事をまとめたのがこの本です。

 日経サイエンスもそうなのですが、本文記事よりコラムの方が面白いという場合が多く、店頭売りの無かった日経バイトを同僚が購読していたのを読ませていただいていたときに非常に印象深く残っていた記事でした。
 書籍化されているのも知らず図書館の本棚で偶然見つけたこともあり、当時の雰囲気を読み返すつもりで読み始めました。書籍化は日経バイト創刊20周年を記念して刊行されたそうです。

 1985年と言えばAppleがMacintoshをリリースしてから1年。
 MacPlus128KやIBM-PC初代の時代です。Z-80マシンもまだまだ現役で使っている方もいたはず。
 コンピュータ(パーソナルだけではない)ユーザとしての氏のコラムは当時はいろいろ海外事情もありますが、日本とは違うアプローチでいろいろと実験的なことをしていた事を取り上げていました。

 コラムを読んでいるとなかなか時代の流れを感じます。当時の日本の事情から見ると少し先を走っている米国での環境やトラブルを含む諸事情などが。MS-DOS 3から後のWindows 3.1が出そうなころからMacintoshに作業環境が完全に移行してしまったこともあり、当時のWindows環境の変遷や諸事情がよく見て取れます。著者はあまりMacに興味が無いようでしたのであまり記事の中には登場してきません。ほとんどがWindows-OS/IBM-PC互換機、一部OS/2が取り上げられているものの、さすがに後半となるとLinuxが取り上げられてきます。

 現在は日経パソコンのオンライン版であるPC Onlineのコラムで(ジェリー・パーネル「続・混沌の館にて」)継続して記事が掲載されています。もちろん現在の話題ですのでWindows7なども題材にあがっていますので、まだまだ楽しめそうです。

いつか暮らせる

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 地球の果てはありませんが、有限です。無限の世界へ誘う本でしょう。

宇宙暮らしのススメ
 野田篤司著 あさりよしとお(絵) 学習研究社
 小惑星移住計画 宇宙暮らしのススメ
 2009年7月28日 第1刷発行
 ISBN 978-4-05-404142-4

 SFファンの間では野田指令で知られJAXA主任開発部員であり、宇宙機エンジニアである野田篤司氏による人類の太陽系内への進出を目指すための啓蒙書と言っても間違いではないでしょう。書中の漫画にはこれまた宇宙大好き、自他ともに認めるロケットマニアで学研の科学マンガの作者でも知られる、あさりよしとお氏による1ページ物のマンガが随所に挿入されています。

 3章立てで構成されており、前半2章が宇宙へ対する理解のための道程で、最終章である3章で宇宙へ広がるための具体的な手法・方法が展開されます。

 重力の大きい着陸や脱出に推進剤を多量に消費する月や火星と言った大型天体ではなく、内部まで利用尽くせる小惑星の開拓により人類は宇宙への版図を築く第一歩を進めるべきであるというスタンスで具体論が展開されます。

 2章の宇宙の常識・非常識のところで、言われてみればそうなのですが、理屈を進めていけば簡単に判るはずの理屈が自分に抜け落ちていたりする事を再認識させられました。
 天文の趣味についていた事もありケプラーの法則の第3法則「惑星の公転周期の2乗と公転軌道の長半径の3乗に比例する」という事を人工天体に当てはめたときの想像が抜け落ちていたのです。
 軌道上で減速を行うと速度が下がるので当然遠心力と重力のバランスが動くため最終的に軌道高度が下がります。すると先の第3法則で示されたように軌道半径が小さくなると公転周期が小さくなります。ということは、公転時間が短くなるため減速したにもかかわらず最終的に速くなってしまうという結果が得られます。
 逆に加速すると軌道高度が上がり、速度が落ちる結果を招きます。
 端的に表現すると減速すると速くなり、加速すると遅くなるという結果を得られる事になり、一般的な常識からは逆の結果を得る事になります。
 理屈を詰めれば、ははぁ、となるのですが、そうですよね?と言われてもすぐにはピンと来ませんでした。

 とにかく。現役の宇宙機エンジニアが実存する確立された技術をベースに人類が宇宙へ版図を広げるための第一ステップを提示してくれている訳です。予算がどうのという経済面の理由はさておき、技術的には夢ではない現実がそこにあるわけで、乗らない手はありません。
 もう、宇宙進出は夢ではないのです。

ホンダ・カムバック

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 古書でしか入手できないと思われますが、楽しく読めました。

ホンダがレースに復帰する時
 高斎正著 徳間文庫
 ホンダがレースに復帰(カムバック)するとき
 1981年1月15日 初版
 ISBN 0193-577144-5299

 何気なく予備知識もなしに読み始めて「あれ?」と思いました。
 かなりドキュメンタリー的な内容にも関わらず、心理描写や登場人物の言動があまりにもリアル過ぎなのです。監督も1960年代に参戦していた中村氏。よくよく確認すると「本格的レース小説」というフィクション小説でした。
 架空のマシンRA303。CVCC技術を確立したベースを駆使して低公害エンジンのCVCC搭載V12気筒3バルブDOHCエンジンでホンダがF1にカムバックするというシチュエーションでスタート。登場するドライバーに技研の日本人ドライバーが登場して参戦するという当時ホンダを熱烈に応援し、F1撤退から再度参戦を願っていたファンの視点からホンダがF1レースに再度参戦するという場合にどのような展開をしてほしい、もしくはするのではないだろうかというベースで描かれた小説です。

 ホンダ学園のF1エンジン始動デモで行っていたV12気筒エンジンはかなり後期のエンジンで、参戦当初のレギュレーションではなかったことから、「おかしいな?」と思いながら読み進めていたのですが、ホンダがF1という状況、登場人物に実際の人物と同じ名前が出てくる事もあり、ワクワクしながら読み進みましたがどうもしっくり来ませんでした。ホンダの社員であり、日本人ドライバーが参戦していた記憶が無い事もあり、発行年月とともに見ると、どうやら参戦前にホンダがF1に再参戦するとしたらという前提で描かれた小説だという事が判明(それでも2回読み返しましたが)。

 しかしながら当時の状況としてF1へホンダが再参戦してほしい。どうせ参戦するなら最高峰であるフォーミュラー1。しかも「レースは実験場」というコンセプトから描かれた状況で社員でドライバーでエンジン開発者という人物を中心に描かれた葛藤とドラマが大変面白いのです。
 ドラマの中では苦悩する技術開発者でありドライバーである担当者の「藤山(たぶん富士山「ふじやま」のもじり?か、往年の本田宗一郎に関連する藤山一郎と重ねた?)」苦悩が描かれており、レースというシーンへの過酷な状況なども合わせて克明に描写されます。実際にカムバックした状況とは異なるのですが、いわゆる「ホンダドリーム」を垣間見させてくれるホンダファンに向けた小説と言えます。

 小説のベースは1968年に撤退したV12エンジン搭載のRA302の延長で描かれています。
 実際にはホンダはこの書籍が発行された後すぐの1983年に参戦開始。小説の舞台に示された通りF2へのエンジン供給などを経て再参戦なのですが、エンジン供給メーカとしての復帰です。当時の供給エンジンはRA163E。80度V8の1500ccターボユニット付きのエンジンでした。
 シャシーも含めて参戦したのは再度撤退したその遥か後、RA099としてフルコンストラクターとしての参戦が1999年からです。

 時代背景と当時の状況を想像すると、いかにホンダらしいF1復帰、参戦状況、ドラマの展開というのが描かれたのかが想像できます。
 ホンダファンのためのホンダドリームを見たい状況だったのでは無いでしょうか。
 過去に振り返って技術展開などの差異や、状況などの違いはありますが、以前にご紹介した実録である「ホンダ二輪戦士たちの戦い」とは違うフィクションとして見ても十分面白い本でした。

UNIXの道

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 日本のUNIXの開祖である石田晴久氏が3月にお亡くなりになっておられました。

UNIXマガジン最終号
 株式会社アスキー発行 季刊 UNIX magazine (最終号)
 2009年7月号(第24巻 第3号 通巻247号)
 総力特集 それぞれのアーキテクチャから見る展望 UNIXの未来

 残念な事に「UNIX magazine」として発刊は、この号で最終号となってしまいました。
 次号からは「NETWORK magazine」と統合され「ASCII.technologies」として新装刊され、引き継がれる事になったそうです。UNIX専門誌として高度な記事を掲載し続けた雑誌が1つ無くなってしまいました。

 さて、最終号の特集ですが、いつものごとく相当数のページを割いています。
 ・UNIXとCとネットワーク
 ・2010年ーPowerとAIX
 ・HP-UXが目指す次世代コンピューティング
 ・OpenSolarisの未来と革新されたユーザビリティ
 ・コミュニティが作るLinuxの未来
 ・BSDが培ったもの、BSDが築くもの
 ・アップルが考えるMac OS Xの未来
と、まあ、てんこ盛りな内容です。

 で、気になるMac OS X 10.6となるSnow Leopardについての記事から拾い読みすると、まずマルチコアの対応が進んでいるとの事。従来のMac OS XはMachをベースとしていたNeXT OSから、色濃くBSDの系統のOSであると言えます。しかしながら、並列処理性がどうももう一つといった感じが否めませんでしたが、Grand Centralと呼ばれる機構でかなり並列処理性が高まるようです。
 また、GPUをCPUがやっている演算処理に振り向けて性能を上げる事ができるOpenCLの搭載が決まっているようです。

 今回のSnow Leopardでは、メモリなどの使用リソースの低減やパフォーマンスの向上と行った地道な部分でかなりの改善を施したようです。
 だいたい、Mac OS Xはバージョンが上がるごとにパフォーマンスが改善されてゆくという不思議なOSですので、今回はその部分を強力に推し進めたのではないかと思います。

 その他、冒頭にも掲げました石田晴久氏の追悼記事、OracleによるSun Microsystemsの買収による今後の予想、前号からの続き記事であるブレードサーバによる仮想化の実際(アスキー・メディアワークスのサーバ事情)など目を惹く記事が多くあります。

 今後の編集方針などがどのようになるのかは判りませんが、このような「読み応えのある濃い記事」が掲載され続ける事を期待します。
 処分されてしまい、手元にない号もありますが、創刊して3年ほどしてから購読開始をした雑誌が休刊となり新装されるのは感慨深いものがあります。気に入って読んでいた技術系雑誌としては先に休刊してしまった共立出版の「bit」に次いで楽しみにしていた雑誌なのですが。

 ASCII.technologiesが今後どのような展開を見せてくれるか見守りたいと思います。

鉄腕アトム

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 天才手塚治虫の名作をモチーフにした「プルートゥ」の元ネタです。

地上最大のロボット

 手塚治虫著 秋田書店刊 SUNDAY COMICS
 鉄腕アトム3巻

 平成11年7月5日発行

 ISBN4-253-06481-7


 初出は1964年(昭和39年)「少年」6月号~1965年1月号である



 浦沢直樹氏によるオマージュ作品である「プルートゥ」ですが、鉄腕アトムのエピソードのひとつである「地上最大のロボット」をベースにしてストーリーが作られています。
 登場するロボットは同じ。




  • スイス「モンブラン」

  • スコットランド「ノース2号」

  • トルコ「ブラント」

  • ドイツ「ゲジヒト」

  • ギリシア「ヘラクレス」

  • オーストラリア「イプシロン」

  • 日本「アトム」


 加えて、ボラー、ウラン、アブーラ博士、ゴジ博士も登場。

 本編は鉄腕アトムのタイトルどおり、アトムが主人公として活躍しますが、プルートゥのほうはユーロポールのロボット刑事という設定は同じですが、ゲジヒトがほぼ前半の主役を務めています。ゲジヒトとはドイツ語の「gesicht 」で、「顔」と言う意味があります。

 手塚オリジナルのゲジヒトは石ノ森章太郎のロボット刑事Kに似ていなくもありません。もちろん、鉄腕アトムのほうが先に発表されたので、石ノ森章太郎の作品のほうがアトムの中のゲジヒトに似ていると言ったほうが良いでしょう。

 浦沢直樹のプルートゥと、手塚治虫の地上最大のロボット編は基本的な部分や登場人物などが重なっていますが、浦沢版と言ってもよいほど違う作品であり、リメイク版といえます。
 こちらの鉄腕アトムがネタ本ですので、こちらを読むとプルートゥの粗筋や設定の基礎になった部分などがわかってしまい、ネタバレといえなくもありません。

 しかしながらどちらの作品も面白く読めます。

 オリジナルの鉄腕アトムは時代が古いとは言え、さすがに手塚治虫作品であり、そのストーリーやプロットは現在でも通用すると感じますし、逆にプルートゥは現在のテクノロジーなどをベースに社会情勢などを織り込んだ複雑な展開となっており、ベースの鉄腕アトムという漫画を塗り替えた設定・ストーリーとなりました。

 こちらの手塚治虫作品を呼んでから浦沢直樹作品を読むもよし、逆でも充分楽しく読めます。

NR500/NS500

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 ちょっと古い本なのですが、懐かしく読み返しました。

ホンダ二輪戦士たちの戦い〜上ホンダ二輪戦士たちの戦い〜下
 富樫ヨーコ著 講談社+α文庫
 ホンダ二輪戦士たちの戦い〜上 異次元マシンNR500
 ISBN4-06-256430-0
 ホンダ二輪戦士たちの戦い〜下 快走マシンNS500
 ISBN4-06-256431-9
 2000年4月20日 第1刷発行

 1988年に徳間書店から「いつか勝てるーホンダが二輪世界チャンピオンに復帰した日」という題名で刊行された単行本にさらに加筆・訂正を行って文庫化したものです。
 当時(1979〜1980年代初頭)はホンダが二輪レースにカムバックし、熱い戦いを繰り広げており、国内の二輪市場も熱くなっていた時代でした。。
 今のようにテレビで海外の二輪レースも含めてリアルタイムや録画放送がすぐされるというほど、国内のモータースポーツ、特に二輪に対しては珍走団のおかげか敵視的・悪意的な社会の目もあり、なかなかレース情報が手に入りにくかった時代で、月刊誌などで行われたレースの結果を見るのが手っ取り早い時代でした。
 実際に雑誌類でNR500やNS500などの写真を見るとゾクゾクしたものです。
 そういった体験もあり、悪い先輩にそそのかされた事もあり、二輪に乗り始めました。
  CB50JX-Ⅰ, DT125, VT-250F(MC08), TL-125Cと乗り継ぎ、ZZR250の後に現在のNinja250に至っています。他社のバイクにも乗っていますが、基本はホンダ好きなのです。

 著書の中にも記載がありましたが、NR500の異形ピストンは後年になってから明らかになったのですが、発想の転換と言うべき丸くないピストンに8つのバルブを押し込めるというアイデアで4ストローク車で2ストローク車と互角に戦えるマシンまで仕上げたというのはすごい事です。
 ここで腹立たしいのは西洋人の唱える「標準」です。NR500が活躍した事により、「ピストンは円形」という制約を持ち出しました。特許などの制約もあるのでしょうが、他社の参入できない障壁、特に海外メーカ(彼らにとっては自国メーカ)では絶対に無理と思える事があれば平気で日本バッシングとも言えるレギュレーションの改訂を行います。
 市販車としてNRの名前を冠した楕円ピストンのマシンは発売が1回限り。いまやプレミアモデルというかどうしたら良いのやら状態とも言えます。

 しかし、本の中から伝わるホンダイズムというかホンダ・スピリットは熱く、レースに燃える現場の様子を垣間見るかのようです。ホンダというキーワードと二輪レースというキーワードの相乗効果でしょうが、熱いブームのあった時代を新鮮に思い出させてもらいました。

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