社会見学

舞鶴地方隊

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 大型連休中、艦上見学ができるとの事で行ってきました。

あたご
 ミサイル護衛艦 あたご(DDG-177)

せんだい
 護衛艦 せんだい(DE-232)

ましゅう
 補給艦 ましゅう(AOE-425)

 この中で「せんだい」が艦上甲板に上がって見学ができます(日程が別であれば「あたご」が艦上見学できました)。

護衛艦 せんだい
 見学用タラップが設置されている

 全長109.0m、基準排水量2,000トンと今となってはやや小振りな艦体ですが、62口径76mm単装速射砲1門、ミサイル発射筒(ハープーンSSM4連装×2)、アスロックSUM8連装発射機×1、20mm機関砲(CIWS)×1、三連装短魚雷発射管×2と豊富な装備を艤装しています。

単装速射砲
 62口径76mm単装速射砲
 砲身は水冷式で最大毎分80発を射出できる

アスロック発射機
 74式アスロックSUM8連装発射機

ミサイル発射筒
 ハープーンSSM4連装発射筒

魚雷発射管
 68式3連装短魚雷発射管(HOS-301)

20mm機関砲
 20mm機関砲 CIWS

 各装備には説明のための詳しい情報のパネルが付随して掲示してありました。

ミサイル艇
 ミサイル艇

 特に公開時の係留艦船として情報が出ていませんでしたが、ミサイル艇である「はやぶさ(PG-824)左」と「うみたか(PG-828)右」が接舷していました。

ひゅうが
 ひゅうが(DDH-181)

 見学エリアの北吸桟橋の対岸に補修中とおもわれるヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」が見えていました。
 遠目で見ても、やはり大きい(全長197m)艦体です。

ましゅう
 ましゅう(船尾から)

 それにも増して補給艦「ましゅう」の方が大きく(全長221m)、船首側は岸壁から全体が入る位置に撮影ポイントが無く、少し離れた場所から撮影してやっと全体が収まりました。始めの写真で艦体近くに写っている自動車の大きさと比べてみると、そうとう大きい艦体だというのが判ります。

 ちなみに今回艦上見学ができた護衛艦「せんだい」は昨今の北朝鮮との瀬取り行為を昨年にP-3C哨戒機と共に確認した時の出動艦船です。
 

未来を見通せ(その2)

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 国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所の一般公開に行ってきました。


大気中水蒸気計測
 地デジ波利用大気中水蒸気計測

 測定のための測定波投射装置を必要とせず、大気中の水蒸気量を計測する原理を実証した装置。
 雨粒はレーダー波を反射するため計測できますが、水蒸気は測定できません。大気中の水蒸気量を測定する事でより高精度な予測が可能になるのですが、そのための簡易な手法を開発したとの事。
 地上波デジタル放送の電波が大気中を進むとき、水蒸気が含まれた大気は密度が高いことから電波の速度が遅くなって遅延する事に着目。その遅延はピコ秒のレベルである事からこの遅延を検出するための実証装置が展示されていました。
 実際に光(電波)が2mm進むのにかかる時間6.7ps程度の遅延を定量的に検出できており、実際の遅延プロファイルと気象情報等の統合を行い、水蒸気量を推定するようになっています。
 デモ装置は1kmの伝播距離を模する遅延器と可変遅延器で構成されており、可変遅延器はノブを使って伝送管を伸び縮みさせることで遅延の増減を生み出します。
 実証実験により実際の大気の測定を行ってデータを積み重ねているとの事でした。


深紫外線通信
 深紫外線(DUV)通信

 開発された深紫外線(DUV)LEDを用いてデータを光通信で伝送するデモを行っていました。このデバイスは深紫外LEDは従来のデバイスより遥かに短い波長である265nmの波長で90mWと高出力なデバイスです。
 今までは殺菌灯(蛍光灯の蛍光塗料が無いもの)を用いていた領域の波長であり、ポータブルなウィルス・殺菌システムや特定微小領域への紫外線照射によるポイントオブケア型医療装置、短波長光源としての測定装置など幅広い応用が期待されています。
 また紫外線より短い波長によりより微細な集積回路の露光光源としても有望視されています。

HeLa細胞
 HeLa細胞

 遺伝子情報から様々な情報を読み解くプロジェクトの一角に有名な細胞サンプルが置かれて、顕微鏡で観察できるようになっていました。
 この細胞は世界で初めての培養し続ける事ができるヒト細胞株でヘンリエッタ・ラックス女史から切除された子宮頸がん細胞を培養しているもの。女史の名前からHeLa細胞と呼ばれています。
 ヒトパピローマウィルスによりガン化したこの細胞は不死性を得ており、条件さえ整えればずっと培養・増殖し続ける事ができる事から様々な用途・場所で利用され続けています。

DNA抽出実験
 DNA抽出実験

 子供も参加できる体験型展示で、ブロッコリーをすりつぶして濾過した液体からDNAを固定させて可視化することで抽出する実験をすることができます。実際に実験をするとDNAの顕微鏡写真のようなきらびやかなものは無く(涙)、綿くずのような物が析出してくるだけだったりします。

析出したDNA
 析出したDNA

 研究者はこの綿くずからPCRにかけたりシーケンスアナライザーにかけたりするのでしょうが、そこまでの実験は短時間ではできないためここまでで終了。

お持帰りDNA
 お持帰りDNA

 抽出したDNAはマイクロチューブに入れて持帰ることができます。
 アルコール固定ですので火気厳禁ではありますが。

 オマケ

軌道星隊 シゴセンジャー
 軌道星隊 シゴセンジャー ショー

 明石天文科学館のヒーローであるシゴセンジャーが出張(笑)でショーを行ってくれていました(前説は明石天文科学館館長の井上さん)。
 肩に日本標準時子午線である東経135度を示す135EとJSTM(Japan Standard Time Meridian)のベルトバックルが目印のシゴセンジャーレッドとシゴセンジャーブルー、憎めない悪役のブラック星博士が登場し、さまざまな天文に関するクイズを解いていきます。
 ブラック星博士はたまらないダジャレでその場の空気を凍てつかせ寒い思いをさせるのが得意。天文科学館のプラネタリウムでは操作卓を乗っ取って邪魔をする事もあるようで、この時も暑く盛り上がる会場で寒〜い思いをさせられました(笑)。

PAWR
 PAWR

 NICTは気象関係の研究も盛んに行われており沖縄電磁波技術センター、大阪大学吹田キャンパスとこの神戸未来ICT研究所に設置されたフェーズドアレイ気象レーダーによる観測を元に30秒毎のリアルタイム計測を行ってゲリラ豪雨などの短期的で急激な気象変化の予測とそれに対応するための研究を行っています。
 一般的な気象レーダーと異なり、水平方向だけでなく垂直方向も含めた立体的な雨量分布が短時間(約10秒)で得られるため、より詳細で精密な気象変化を観測することができます。

 このほかにも多数の研究発表がありましたが、撮影ができていなかったり、肝心の面白いところが撮影できなかったり、写真では説明しづらい内容だったりと今回の記事で割愛した部分もあります。
 ぜひ機会があれば、ご自分で、その目で、様々な研究成果を直接ご覧頂く事をお勧め致します。

 その1はこちら

未来を見通せ(その1)

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 国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所の一般公開に行ってきました。

未来ICT研究所
 未来ICT研究所(神戸・岩岡)

日本標準時表示
 エントランスの日本標準時表示

 略称NICT。日本の標準時を管理していてStratum 1のNTPサービスも提供しています。
 日本標準時を作り出しているのがセシウム発振器を使った周波数標準器。

周波数標準信号発生器
 周波数標準信号発生器(HP 5071A)
 セシウムビームチューブカットモデル(右上)

 実際に小金井の標準時を管理している装置と同型の周波数標準信号発生器とセシウム発振管のカットモデルが展示されていました。HP製(Agilent Technologyに移管後、現在はMicrosemiから販売されている)のユニット、なかなかいいお値段です(推定1台1,000万円以上)。
 1秒の定義がセシウム133原子 (133Cs) の基底状態にある二つの超微細準位間の遷移に対応する放射の9192631770周期にかかる時間となっていますので、ここに内蔵されているセシウム発振器が安定した状態で発振している振動数から1秒が決められる事になります。
 標準時の精度は10-12程度の精度を保持しており、NICT本局では厳重な電磁シールドルームにラックマウントされたこの装置を18台同時に稼働させ、正・副・予備の三重冗長構成で装置間平均をとってさらに精度を上げて運用しています。
 今後は単体でさらに精度が出せる光格子時計の開発を続けています。

 この一般公開の少し前の時の記念日である6月10日から小金井の本部の施設に加えてこの岩岡の建家内で神戸副局の運用が開始されました。担当の方とお話をさせていただくと、なんらかの理由(大規模災害を想定しているそうです)で関東の本部がアウトになった場合に標準時提供を停めることなく運用できるように副局をおいて分散するリスクマネジメント目的だとか。ちなみに予算の関係で神戸副局は本局よりぐぐっと台数が少ない5台の周波数標準信号発生器と水素メーザー2台を用いて運用しているそうです。
 
クリーンルーム
 クリーンルーム
 手前の装置はスパッタ装置

 デバイスの試作(本当に動作原理から検証する)ためのライン一式を持っています
 この部屋は成膜室で電子ビーム蒸着装置、スパッタリング装置、(見えていませんが)光学薄膜成膜装置が置かれています。
 電子ビーム蒸着法は成膜対象材料を電子ビームで加熱蒸発させ、蒸発源上部に設置された基板材料に堆積させることで薄膜を形成します。
 スパッタリング法は成膜法としては蒸着法とは別のポピュラーな方法で、装置内は高真空にし、放電によって出来たプラズマを生成し、プラズマイオンを電界で加速してスパッタ材料にぶつけ、材料から叩き出された原子によって基板に膜を形成する方法です。

スパッタリング装置
 電子ビーム蒸着装置

 この日の見学では中にダストカウンターが設置されていかに内部の浮遊粒子が少ないかを見せてくれていました。
 動作そのものが実現できるかどうかのレベルの試作も多い事から、所内で半導体製造プロセスを用意しており、すべて所内でデバイスの製作ができるようになっています。今回の見学した部屋以外にも電子ビーム描画装置や走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡などの装置が設置利用されており、クラス1000に加えてクラス100(露光装置が置かれている)のクリーンルームもあり、これらを活用して次世代デバイスの開発を行っています。

ウェアラブル脳波計
 ウェアラブル脳波計

 既存の脳波計測に使われる装置を導電ペースト不要電極を用い、小型軽量・ワイヤレス化することで被測定者への負担の低減(QOLの維持・向上)を図りながら計測できる装置を開発し、それを用いたデモとしてゲームを行っていました。

BMIレーシングゲーム
 BMIレーシングゲーム

 ヘッドギアタイプの脳波計からBluetoothで測定データを伝送し、PC側で計測脳波から特徴抽出(フーリエ変換)してアルファ波(8〜13Hz)の強さからレーシングカーの速度をコントロールしてラップタイムを競うゲームです。
 実際は集中度を示すとされるシータ波(4〜7Hz)も見ているとの事でした。


超伝導単一光子検出器
 超伝導単一光子検出器(チップ素子部分)

 超伝導ナノワイヤ(NbN:窒化ニオブ)によるミアンダ構造に光子が入る事でホットスポットが形成されて超伝導が壊れる事で単一光子の突入であっても検出する事ができる素子です。
 光検出半導体としてアバランシェフォトダイオード(APD)が用いられてきていますが、動作速度が遅く、検出効率も低く暗時カウント数も多いなど高精度な測定には問題がありました。それらを克服するべく開発したのがこちらの素子で、光子検出毎秒7,000万個(70MHz)と毎秒40カウント(APDは毎秒16,000カウント)と大幅な暗カウント数の低減、高い検出効率80%(同10%)を達成し、さらに冷却に液体ヘリウムが不要で装置も小型化できるとの事。
 またAPDの様にゲート動作が不要なため測定に同期回路も不要になって、より使いやすい素子だそうです。

マイスナーカー
 マイスナーカー

 超伝導現象の一つであるマイスナー効果を応用した浮遊して磁石軌道上を動く車のオモチャ。
 車の中にはYBCO(Y:イットリウム、Ba:バリウム、Cu:銅、O:酸素で構成される酸化物系超伝導化合物)と液体窒素を保持するくぼみがあり、そこに液体窒素を流し込むとYBCOが超伝導状態になります。
 超伝導状態になると外部磁場が超伝導体の内部に進入しないことから磁力の反発がおき、ピン止め効果によって浮遊したまま固定されます。よく浮いた磁石のようなものが示されている超伝導の一般的な現象の1つを応用して、磁石のレールにより誘導する事で非接触のままレール上を走るように動き回ります。

超伝導集積回路
 超伝導集積回路

 超伝導状態で動作するジョセフソン素子を用いた超伝導集積回路。このときのサンプルは多分、NbNを用いた世界初のジョセフソン素子だったと思います。
 写真の回路は何なのかをおお伺いするのを失念してしまい調べたのですが何か判明できませんでしたが、多分エラー訂正回路の一部だろうと...。

 その2はこちら

科学の光で照らせ 2018

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 大型放射光施設SPring-8の一般公開に久しぶりにお邪魔しました。

 過去の記事はこちらをご参照ください。
 2012年
  その1(SPring-8 線形加速器)
  その2(SPring-8 シンクロトロン)
  その3(SPring-8 蓄積リングとビームライン)
  その4(New SUBARU)
  その5(XFEL SACLA)
 2013年 記事(New SUBARU 蓄積リング)
 2014年 記事(SPring-8、SACLA、New SUBARU)

加速器棟
 SACLA加速器棟

 コヒーレントな光であるレーザー光の短波長化は光科学の大きな到達目標でした。硬X線レーザーを実現したのがSPring-8に隣接して建設されたSACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free-Electron Laser)です。実際にレーザー光発振に2011年6月に成功し、2012年3月から供用が開始されました。
 今回はいままでアンジュレーターのある光源棟だけだったSACLAの一般公開が基点の電子銃や加速器を含めた全てが初めて一般公開されました。

電子銃
 電子銃

 一見、巨大な鉄の箱にしか見えませんがホウ化セリウム(CeB6)電極をグラファイトヒーターで1450℃まで加熱したカソード電極と電子を放出させる500kV/1Aの出力を持つ高圧系が絶縁油の中に収められています。ここから1nsのパルス幅で毎秒60回の500keVのバンチを打ち出します。

Lバンド
 加速空洞(Lバンド 1428MHz)

Sバンド
 加速空洞(Sバンド 2856MHz)

Cバンド
 加速空洞(Cバンド 5712MHz)

 高純度無酸素銅を1μmの精度で加工した加速空洞は350kVの強い電界を達成してコンパクトな加速器で電子を最終的に8GeVまで加速します。1つの加速管で130MeVの加速を行うことができます。
 

 加速は高周波で行いますが、その高周波発生源に用いられているのがクライストロンで、加速器室の外側(クライストロン・ギャラリー)に設置されています。

クライストロン
 クライストロン

クライストロン電源
 クライストロン電源

 クライストロンの出力は50MWあり(SPring-8の直線加速器は80MW)、その出力を支えるためにキャパシタと高性能な電源により実現しています。電源部は大電力、高い動作速度を要求される事からSiC MOSFETが採用されているそうです。ちなみにクライストロンは東芝製です。
 クライストロンそのものはSPring-8の直線加速器に用いられているものよりもだいぶ小さいサイズとなっており電源もコンパクト化されています。

 このクラスの高周波大電力装置はさすがにトラブルも発生する率が高く、運用初期では加速管での放電、クライストロンカソード部での放電のほか、パルス作成のためのスイッチに用いているサイラトロンの自爆などによって運転が停止する事があったとの事ですが、現在ではトラブル発生後の復旧手順も含めて改善されており、安定した供用に利用できる状態になっています。

ビームダンプ
 ビームダンプ(BC1)

 電子銃から打ち出されたバンチを廃棄するためのビームダンプ(50MeV対応)。
 これはバンチ圧縮をするBC1の後方に設置されていて、不要なバンチや状態の悪いバンチをSバンド加速空洞に通す前に廃棄するためのものです。ここのビームダンプで廃棄されるバンチは30MeVまで加速されています。

シケイン
 シケイン(BC2)

 SACLAの加速器中では三ヶ所設置されているバンチ圧縮装置(Bunch Compressor:BC)で写真のBC2はSバンド加速空洞の後段に設置されているものです。
 エネルギー差を利用して電磁石により電子の方向を変える事で経路を変えて時間方向の圧縮を行う事でバンチ中の電子塊を圧縮します。
 偏向電磁石を通過するとエネルギーの大きい電子は偏向角が小さく、小さい電子は偏向角が大きい事を利用して経路の長さを変える事で加速時のエネルギー差により時間軸方向に広がった電子塊を圧縮する機能があります。バンチを曲げて迂回させることからシケインとも呼ばれています。

キッカー電磁石
 キッカー電磁石

ビーム分岐
 ビーム分岐

XSBT
 SPring-8へ(XSBT)

 開設当初は中央のビームラインBL3しかありませんでしたが、ビームライン増設とSACLAで加速したバンチをSPring-8に供給するためのラインが増設されました。
 当初新設のBL2とは時間を区切ってBL3とのビームの切替運転を行っていましたが、バンチ振り分けをキッカー電磁石を用いてリアルタイムで行う事が可能になり、BL3とBL2は同時に使用できる状態となりました。

 左のラインBL2は新設されたもので、計画では全部で5本のビームラインを設置する事になっています。向かって右側の大きく曲がったラインがSPring-8に行くラインXSBTです。SPring-8の蓄積リング側は過去の記事で紹介していますが、そこまでの経路は建家の壁をぶち抜いてムリヤリ通しているとの事。既存の施設に増設となるため仕方がありませんが。
 SACLAの加速周波数は79.3MHz(79,333,320Hz)の整数倍である5712MHz、SPring-8の加速周波数は508.58MHz(508,579,360Hz)、旋回周波数は208.78KHzでありそのままでは同期が取れないためビーム入射のために同期させる必要があります。

ビームラインBL3
 ビームラインBL3

 世界で初めて発振に成功した自由電子X線レーザーはこのライン(BL3)で生まれました。
 ずらっと並ぶ真空封止型アンジュレーターによりX線の波長と同調した電子の相互作用によって増幅する自己増幅自発放射(Self-Amplified Spontaneous Emission : SASE)によりコヒーレントなX線を発生させています。現在発生できる光の波長は0.63Åであり、これは他のXFEL施設に比べてもっとも短い波長のX線レーザーとなっています。

アンジュレーター
 真空封止型アンジュレーター

 日本が誇る独自技術である真空封止型アンジュレータ。磁石を真空に対応し、ギャップの開閉が可能な高度な組立技術を必要とするものですが、開発し実用に成功したのは日本が初めてです。国内では高エネルギー加速器研究機構(KEK)を初めとし、SPring-8とこのSACLAのほか、海外にも続々と納入されているようです。
 SACLAの真空封止型アンジュレーターは日立金属製なのですが、1つだけNEOMAXのものが入っています。日立金属の関連会社で磁石に特化した製品を製造開発している会社で製造はNEOMAXが行っている事から、納入時に1つだけ自社ロゴのものを入れたようで、メーカーアピールのためだと思われます。

ビームラインBL2
 ビームラインBL2

 新規に増設されたビームラインで2015年3月から供用開始しました。
 ライフサイエンス系を中心とした利用実験を目的とし、BL3と同様に1μmの集光装置を備えています。いままでBL3のみの運用では、実験毎にシステムをバラして組み立て直す必要がありましたが、ビームラインが増えた事で長期の利用実験を行う事ができるようになりました。

SXFEL
 SXFEL(BL1)

 SACLAに先立ち実証実験として長さ約1/12のSCSS(SPring-8 Compact SASE Source)が別棟(組立調整実験棟)で建造され250MeV加速器による真空紫外線レーザーの発振に2006年に成功。加速器、光源、利用運用などの様々な試験研究が実施されましたが、2013年5月に運転を休止しました。その装置を移設し800MeVまで増強改良して軟X線のXFELのビームライン(SXFELビームライン)を構築し、2016年から利用運転を開始しています。
 このビームラインによりBL2,3により発生する硬X線FELに加えて軟X線FELを同時に独立して利用できる事になり、より利便性が上がりました。

 光学棟にはBL1からBL5まで全部で5本のビームラインを設置するスペースがあり、現状はSCSSからSFEXLとBL2、BL3が設置されています。

実験ホール
 実験ホール

 アンジュレーターで発生したX線レーザーはこの実験ホールで活用されます。
 実験ホールの手前には全反射ミラーを利用した集光装置が置かれ、数μmから最小で1μmまで絞られて利用できるようになっています。

MPCCD
 MPCCD
 撮像にはCCD素子を用いて通過してきた光を捉えます。
 撮像部はバリエーションがあり、その一部が展示されていました。左下の小さい方が画素数1024x1024でCCDパネルを2枚使用したもの、右側の大きいものは画素数2048x2048でCCDパネルを8枚使用したもので、撮像した画像(X線回折像)はポートアイランドにあるスーパーコンピュータ「京」を用いて処理されているそうで、近い将来にはスケールダウンした「京」を設置して処理する予定になっているようです。

 今回はSACLAの電子銃から加速器、ビーム分岐部、アンジュレータから測定部までの端から端までを見ることができて大変有意義でした。それにしても直線距離で700mの端から端までは長かったです。巨大科学施設というのは全てが遠い(笑)。SP-ring8のビームライン棟は移動に自転車を使っているぐらいですし。

DDH-181

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 舞鶴が定係港になったそうで、見学日に接岸していました。

DDH-181 ひゅうが
 DDH-181 ひゅうが

 ひゅうが型護衛艦の1番艦である「ひゅうが」が、舞鶴地方隊の北吸桟橋に係留されていました。
 残念ながら甲板に上がって見学はできなかったのですが、基準排水量13,590トン、全長197m、全幅33mの艦体は他の護衛艦とくらべて明らかに一回り大きく見え、圧倒させられます。全長はそれほど差がないのですが幅と甲板までの高さによるボリューム感によってはるかに大きく感じ取れます。
 「ひゅうが」は初のヘリコプター搭載型護衛艦としてIHIマリンユナイテッド横浜工場で建造され、それまでに開発されていたいくつもの新装備や技術を投入しています。

FCS-3用レーダー
 FCS-3用レーダー

 「ひゅうが」にはその新装備の1つであるFSC-3(射撃指揮装置3型)が搭載されています。FCS-3は新戦術情報処理装置ADCS(Advanced Combat Direction System)との組み合わせにより、目標の追尾・補足だけでなく、情報入力や攻撃指示もドクトリン管制によって自動的に処理され、オペレータの負荷が軽減されています。

 FCS-3の装備の1つが艦橋に設置されているCバンドアクティブ方式フェーズト・アレイ・レーダー(大きい方のパネル)と、ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)を管制するために追加されたXバンドフェーズド・アレイ・イルミネーター(小さい方のパネル)です。Cバンドレーダーが捜索・追尾を行い、ミサイル管制はXバンド・イルミネータで行われ、最大探知距離200km以上、最大追尾目標数は300程度だそう。ただ、主砲管制が無いため、システムとしては特注になるとか。

 V-22オスプレイが日本の艦艇として初めて着艦したのもこの「ひゅうが」です。巷ではF-35BやハリーアなどのVTOLを運用して本当に空母になるのではないかと噂されていますが、ジェット排熱に耐えることのできる甲板を装備していないため、そのような運用は無理で、あくまでもヘリコプター型の運用が前提です。

科学の光で照らそう 2014

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 ここのところ続けて一般公開にお邪魔していますが、今年も参加。

 過去の記事はこちらを参照してください。
 2012年
  その1(SPring-8 線形加速器)
  その2(SPring-8 シンクロトロン)
  その3(SPring-8 蓄積リングとビームライン)
  その4(New SUBARU)
  その5(XFEL SACLA)
 2013年 記事(New SUBARU 蓄積リング)

 過去の訪問でおおまかな部分はご紹介させて頂いてますので、今回はそれ以外の小ネタ的なものをご紹介しようと思います。

ビームプロファイルモニタ
 ビームプロファイルモニタ

 明るく表示されている部分が直線加速器に取り付けられたビームモニタです。上から観測窓、反射鏡2枚、モニタカメラの構成となっています。
 高エネルギー電子が当たると放射化して放射能を帯びてカメラが壊れてしまうため、直接観測窓を直接カメラで観測せずに鏡で反射させてからカメラに導いています。
 測定時はビームラインに1mm厚クロム含有アルミナのスクリーンを挿入し、その反射光を鏡でカメラに導いてビーム形状を観察し、不具合があれば観察プロファイラの前段の電磁石などを調整します。
 当然ですが観測中は電子ビームが遮られてしまいますので、通常運転時はビームプロファイルのモニタリングはしません。

エネルギー圧縮システム
 エネルギー圧縮システム(ECS)

 線形加速器中で特に放射能を帯びている箇所がこのエネルギー圧縮システムシステムです。見学時は鉛のブロックを並べた遮蔽を行っていました(クリーム色の衝立様のものが遮蔽板で、上部に鉛ブロックが並べられている)。
 エネルギー圧縮システムでは偏向電磁石を用いてバンチの経路を曲げる事でバンチ内の電子の持つエネルギーの差にビーム軌道差による行路差(距離の差)を利用してエネルギー差による電子の位置を振り分け、その後の加速管で変調する事でエネルギー幅を圧縮します。
 エネルギー圧縮システムにより1%程度のバンチ内電子のエネルギー差が0.5%まで圧縮されます。

 電子の経路を曲げるためどうしても取りこぼす電子が発生し、それらが機器内の物質に当たる事で放射性を帯びるため、この区画では非運転時は遮蔽をおこなっています。実際にガイガーカウンターを当てると、2〜30カウント/secぐらいはあるようです。

 エネルギー圧縮システムの詳細についてはこちらを参照してください。

導波管の注意書き
 導波管の注意書き

 直線加速器では2856MHzの周波数で80MW・4μsec、60パルス/secの高周波を用いて電子を直線加速します。
 加速空洞に通す高周波出力は電線ではなく、強制水冷の二重パイプ形状の導波管を用いて行っているのですが、接続部のフランジボルトが緩んで隙間ができると、その隙間から加速に使っている電磁波が漏れる事により感電や火傷の恐れがあります。
 ちょっとビリビリなピクトグラムと注意書きがネジで締結している導波管の各所に付けられていました。

SACLA光源棟
 SACLA光源棟

 発振から2年、発振実験に成功した時の公開時はアンジュレータ以外はガラガラだった光源棟に、次々と機材が設置されていました。
 何気に普通の床に見えるこの光源棟の床はコンクリートを50μm精度の平面研磨を行ったという脅威の技術の賜物なのです。それぐらいの精度と確度でなければXFELの波形重ね合わせによる発振はできないのです。
 また振動も10nmレベル、温度管理は0.01℃の変動レベルで管理しているそうです。
 要らぬ心配かもしれませんが、一般公開で外部から大量にいろんなもの(チリやホコリなど)が持ち込まれるので後の清掃が大変なのではないでしょうか。入退出部に粘着マットが設置されていましたが、ほんの気休めレベルではないかと。

オプティカル・クライストロン
 オプティカル・クライストロン

 New SUBARUのレーストラック型蓄積リングに設置された国内有数の長さを誇る11m長尺アンジュレーターの反対側の直線部にあるオプティカル・クライストロン。SACLA同様に自由電子レーザー(FEL)用の光クライストロンなのですが、設営当初入れたにもかかわらず、研究するためのマンパワー不足・手をつける人が居ないことからあまり利用されていなかったとの事。
 近年、レーザーコンプトン散乱によるガンマ線専用ラインを設置して利用し始めたようです。

クライストロンと電源部
 クライストロンと電源部

高周波加速空洞
 高周波加速空洞

 New SUBARUの1GeVを維持するために1ヶ所設置された加速空洞と、その高周波を造り出すクライストロン、その電源部です。
 クライストロンのそばまでは見に行けないので遠方からの撮影ですが、塔のようにそびえ立ったクライストロンとその横の巨大な箱の電源部が印象的です。高圧・高出力高周波を取り扱うため、ケーブルも太い上に周囲を柵で囲まれているのが危険さを物語っています。

 ここからはオマケです。

ピコネコ
 ピコネコ

 SACLAの実稼働が始まり枕詞が付加されて「世界一小さいものが見えるX線レーザー ピコスコープ SACLA」となりました。
 SACLAのX線自由電子レーザーの波長は63pmで、現状世界一小さい波長で観察できる機器となります。またパルス幅は30fsと極短時間であり、原子同士の反応を観察する事ができる事が期待されます。
 一般向け広報のためにゆるキャラ®が新たに作られまして、名前がピコネコ。目が「ピコスコープ」のキャラであることから虫眼鏡をイメージしています。

播磨サクラ
 播磨サクラ

 どうしてこうなった的驚きが凄かったのがこちらの播磨サクラ。これはポスターですが、実はメカものアニメのオープニングをイメージしたアニメーションがあり、その中の一コマだったり、イメージイラストなどがあちらこちらに貼ってありました。
 後ろにある機材のカバーだとは思いますが、施設内各所に頻出しています。
 建家2階のホール会場では制作されたアニメが大きなディスプレイで放映されていました。YouTubeバージョンとは一部違う映像で、別途制作されたものを流していた模様。


 未来光子 播磨サクラ

 なかなかマニア受けする設定があり、クリエーター側のスタッフ名が凝っています。ネタバレ覚悟の方はどうぞ。
 企画・プロデュース
 礼座美夢(れいざ・びいむ/レーザービーム)
 彦目 透(ぴこめ・とおる/ピコ目通る)
 杏樹鈴大(あんじゅ・れいた/アンジュレータ)
 シリーズ構成 寺戸瑠次(てらへ・るつ/テラヘルツ/THz)
 助監督 三黒奈乃(みくろ・なの/ミクロ〜ナノ)
 キャラクターデザイン 富江向斗(ふえ・むと/フェムト)
 総作画監督 須羽 昆(すぱ・こん/スパコン)
 美術監督 榮美丹守(えみ・たんす/エミッタンス)
 色彩設計 布央 敦(ふお・とん/フォトン)
 編集 葉 流清(パ・ルス/パルス)
 音響監督 家倉 登(カソ・ド/カソード)
 アニメーション制作 オングストローム兵庫
 監督 江楠 礼(えくす・れい/エックスレイ/エックス線)

 ちなみに提供は「ピコスコープ・SACLA」です。

 SPring-8の施設一般公開は楽しいのですが、なにせ広い敷地内をあっちへこっちへ移動するため、移動用バスが巡回しているとは言え、かなり疲れます。こんな事を言うと、案内してくださっているスタッフの方々から文句が来そうですが。
 また、今回は天候も良かったこともあり別件で理化学研究所が有名に(苦笑)なった事も手伝ってか8,000人を超える来場者数があり、かなりどこも混雑していました。

 少し残念なのは、見学コースの対象となっている施設内の場所がだんだんと減ってきている事です。
 すでにSPring-8の蓄積リングの全周、シンクロトロンリングは見る事ができなくなっていますし、直線加速器棟の2階(クライストロンや高周波電源がある)も公開されていません。
 スタッフの方もご苦労があるかとは思いますが、次回にはぜひ公開して見せて頂きたい事を願ってやみません。

科学の光で照らそう

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 高輝度放射光施設(Spring-8)の施設公開に行きました。

New SUBARU
 New SUBARU(ニュースバル)放射光施設棟

 今年は昨年に行けずに悔しい思いをしたニュースバル放射光施設の見学ツアーで中を拝見させて頂きました。
 ニュースバルは兵庫県がSpring-8の敷地内に設置された放射光施設で、共用の直線加速器(LINAC)で1.5GeVに加速された電子塊(バンチ)を利用して独自の蓄積リングで放射光を発生させて利用するための施設です。
 発生させる放射光は軟X線から極短紫外線の範囲でSpring-8の硬X線での運用に対して相補的な利用が出来るようになっています。

電子ビーム分岐部
 電子ビーム分岐部
 右側に延びる建家がニュースバル向けの導入路
 中央のかまぼこ型の建家が直線加速器棟
 左側は8GeVへ加速するためのシンクロトロン

 LINACで加速後写真右側に延びているトランスポートトンネルを通って電子バンチはニュースバルに導入されます。

電子ビーム導入部
 電子ビーム導入部
 向かって左側から導入される

蓄積リングの一部
 蓄積リングの一部(外観)

 蓄積リングは2カ所に14mの直線部があるレーストラック型というユニークな形状をしていて周長は118.731mあり、1.0GeV〜1.5GeVのエネルギーで電子を蓄積することができます。

電源群
 電源群
 右奥の巨大な筐体がクライストロン用インバータ電源

 蓄積リングの内側スペースには装置類への電源などが設置されています。
 通常クライストロンは放電時の保護のためにコンデンサーを用いた巨大なクローバー回路を必要としますが、ニュースバルではインバーター電源を用いる事でこれらを省略し、効率化・小型化をしています。

高周波加速空洞
 高周波加速空洞

 蓄積リングで放射光を出した電子はエネルギーを失いますので、それを補填するために高周波を使って加速を行います。ニュースバルの周長118.731mに対してバンチの総数198個を管理しますので高周波加速器の発振周波数は499.955MHzとなり、加速された電子は蓄積リング中を1周396nsで周回します。

用周期可変アンジュレーター
 自由電子レーザー用周期可変アンジュレーター
 BL1a/BL1b/BL2

 挿入光源(アンジュレーター)は永久磁石を使い放射光を得る事が多いのですが、こちらでは波長調整範囲を広く取るために永久磁石ではなく電磁石によるアンジュレーターがあります。
 ここで得られるコンプトン散乱によるガンマ線を用いて長寿命の核廃棄物処理の研究が行われており、実際にビームラインでは原発事故での回収土壌を封じ込め・保管する容器の評価試験を行っていました。

長尺アンジュレータ
 長尺アンジュレータ
 BL9/BL10

 またニュースバルではSpring-8に次ぐ世界有数の長さをもつ長尺アンジュレータが設置されており、11mの永久磁石型アンジュレータが導入されています。
 長尺アンジュレータによって得られたコヒーレント性の高い軟X線によりナノメータ以下の測定を行うミラー形状測定技術を開発しているそうです。

ビームライン測定部
 ビームライン測定部(BL5A)

 写真の測定部はビームラインBL5のもので、産業分析用ビームラインとして運用されていて、物質・材料を構成する元素の化学状態・結合状態・隣接原子との距離などが解析でき、物性分析ができます。

 ニュースバルはSpring-8の連続終夜運転と違い、運用時間を企業利用者向けに合わせているため9:00〜21:00となっています。企業利用者が泊まり込みでの外部施設での測定というのは難しい側面があり、このようになっているとのこと。
 また、電子バンチはSpring-8が優先されるため、LINACで加速した電子をニュースバル向けに振り分けてもらうのに待たされる事も多く、運用に苦労しているようでした。

 ニュースバルでの産業利用を促進するため放射光施設を利用した分析を受託する組織としてシンクロトロンアナリシスLLCという会社を立ち上げ、先の写真にある産業用ビームラインを活用して新しいビジネスを目指しているそうです。

 学術・研究利用の大型放射光施設であるSpring-8に対して、ニュースバルはこじんまりした分、小回りを利かせて多様な用途を提供して産学連携の放射光施設を目指しているようです。

 Spring-8もそうですがニュースバルも1999年の運用開始から10年以上経過し、経年劣化による施設や設備、機器類のほころびがいろいろ出ているとの事。ニュースバルは小回りが利く分、施設更新をこまめに行っているようですが、Spring-8はなかなかそうもならずアボートしないものの運用の補修・保守には苦労しているとお伺いしました。
 成果を上げているのですから、もう少し科学振興予算を突っ込んでも良いのではないかと思います。少なくともこのクラスの第3世代大型放射光施設は世界で3カ所しかなく、X線自由電子レーザーであるSACLAやニュースバルなどの複合施設として運用できるのは世界中探してもここだけです。
 日本の次世代科学技術や産業技術のためにも頑張ってほしいものです。

 余談ですが、Spring-8でのお話。
 関西電力の電気代値上げでかなり苦労させられているとのこと。なにせ運用時最大36,900kWを消費します。設備更新や入替で省エネになる機器へのリプレースなどで節約に頑張っていらっしゃいました。ちなみに年間電気代は19億円(平成21年度実績)だそうです。

科学の光で照らそう(その5)

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 一番新しい施設SACLA。名前が和風です。

 XFEL(自由電子X線レーザー)は原理的には解っていましたが、実際に施設として運用できるスケールかつ実用になるレベルの強さの光が出せるかとなると別です。

パネルセッション
 パネルセッション

 各国のXFEL施設の対比表が掲出されていました。
 まあ、この手のアピール点として自分たちの目立つ所を目立つように表現するのですごく良く見えます。はやぶさの場合と同じで少ない予算でこじんまりとしつつ、目的を達成して実現してしまうという日本のお家芸的な印象があります。

 実際に米国のLCLSの後発ということもありますが、全長が最も短く、加速エネルギーが一番低く、なおかつレーザー波長が最も短い(高エネルギー)、さらにお安く仕上がっております(笑)。いや、感心しますよ本当に。

光源棟
 光源棟

 加速器部分(加速器棟)を見学できなかったのですが、光源棟の中は公開されていました。
 実際に機器が設置されているのは現状は中央のラインのみで、今後徐々に設備が設置されていくようです。
 奥の方に黒っぽく小さく写っている機械の固まりのような物がXFELのための真空封止アンジュレータです。

ビームダンプ
 ビームダンプ

 不要になった電子塊はビームダンプで破棄されます。
 ビームダンプに落とすための偏向電磁石が置かれていましたが、これもまたやっぱり巨大な電磁石でした。

実験研究棟内部
 実験研究棟内部

 やはりここも巨大な空間を構築するターゲットの置かれる場所。這い回る電線の太さと数が強烈です。

SACLAからの入射点
 実はSACLAのXFEL用の高品位電子ビームをそのままSpring-8に入れるための追加施設を施工中で、上の写真はSACLAから来たXFELの電子ビームをSpring-8のシンクロトロンへ入射するための入口です。
 まだ、設営中のためSACLA側からの受けを作っている段階のようです。

オマケ

電源とモータドライバ
 ラック中の電源ユニットとステッピングモータドライバ

 SPring-8で恒常的に使われる規格化された電源とステッピングモータのドライバと思われるユニットですが、SPring-8ロゴが入っていました。よく見るとあちこちの電源ユニットが全てこのタイプ。単一規格で大量に発注しコストダウンと、可換性を高めるようになっているのでしょう。

 それにしても最短波長0.6オングストロームでの位相の揃ったレーザー光というのは、大きな期待を抱かせてくれます。現在の反射鏡を用いて励起・増幅するレーザーがX線では出来ませんでしたので、XFELの意義はかなり大きいと言えます。SPring-8は放射光ですのでインコヒーレントな放射光であり、XFELではコヒーレントな光であるからこそ利用できる(観察できる)事象が拓けます。

 また、SACLAの立ち上げが非常に短い期間で発振へと至ったのは、担当した技術者たちがSPring-8の構築で遭遇した数々のトラブル解決の経験を活かして、ほとんどトラブル無しに当初の目的レベルに達成できた事も大きいそうです。
 当時SPring-8構築時に訳も解らずに現場に放り込まれて次々と発生する難題を四苦八苦した経験が役にったったとの事でした。トラブルになりそうな事象を回避しながら設計・施工出来たのは非常に工期短縮に繋がったそうです。技術の蓄積というのは大きいという事ですね。

 SACLAの解析データは膨大で、TB(テラバイト)単位になるそうです。
 これも理研の施設で世界最高速の性能を出した「京(けい)」へ高速ネットワークを経由して送信し、その処理性能を活かしてデータ処理を行う計画だそうです。

 様々な基礎研究・応用研究を行う施設が有機的に結合して運用され、新しい知見を得る事ができるよう期待します。

科学の光で照らそう(その4)

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 兵庫県立大学(旧姫路工業大学)の設置した隣接施設であるニュースバル(New SUBARU)です。

ニュースバル放射光施設
 ニュースバル放射光施設
 エントランス

 SPring-8の線形加速器(Linac)で1GeVに加速された電子を用いて放射光を利用している隣接施設です。
 高度産業科学技術研究所および兵庫県立大学によって利用・運営されており、SPring-8に比べて、より学際領域・研究領域的な利用がなされており、11mの長尺アンジュレータを用いたビームラインを含めて、全部で11本のビームラインが設置されています。また、入射は1.0GeVですが、蓄積リング中で加速を行い、最大1.5GeVまで上げる事も可能です。

蓄積リング
 蓄積リング
 銀色の外装がある部分が蓄積リング筐体

 残念ながら時間不足で見学ツアーに参加できなかったため、蓄積リングの詳細は見る事が出来ませんでした。
 蓄積リングは周長118mのレーストラック型で加速周波数は499.955MHz、パケット数は最大198個のバンチを扱うことができます。パケット管理はSPring-8の手法を取り入れているため、絶対番地管理も可能です。

ガンマ線ビームライン
 ガンマ線ビームライン(BL01)

 蓄積リング内の電子にレーザー光を照射することでコンプトン散乱ガンマ線を発生させ、陽電子と電子の対生成、核変換のほかにガンマ線非破壊検査等への応用研究を行っています。
 検出装置に極低音に冷却したゲルマニウム検出器のほか、測定時のセンサー周辺のバックグラウンドを遮蔽するための鉛ブロックなどが置かれた部屋を新設中だったようです。

極端紫外線露光研究開発センター
 極端紫外線露光研究開発センター
 2010年10月に開設

 ニュースバル内に次期半導体リソグラフィ技術として基礎研究が進められている極端紫外線(EUV)露光を研究する開発センターが設置されています。レーザー励起X線光源を用いて干渉露光を利用し、10nmクラスのレジスト開発、マスク技術、評価技術などの開発を目指しています。
 極端紫外線露光リソグラフィー(EUVL)では半導体の製造にインテル社が導入を決定し、各国がしのぎを削っている状態です。ここで例によってですが材料系に強い日本の企業が幅を利かせており、マスクでは100%、レジストでも70%の占有率を誇っているそうです。

世界初のEUV露光装置
 世界初のEUV露光装置(BL03)

 兵庫県立大学および高度産業科学技術研究所と、Selete(半導体先端テクノロジーズ:解散済)、出光興産、三菱瓦斯化学、東京応用化学工業、日産化学工業などの企業複合体とともにEUVA(極端紫外線露光システム技術開発機構)を含めて共同研究を行っています。
 写真はEUV干渉露光による世界初の露光装置。

産業用分析ビームライン
 産業用分析ビームライン(BL05)

 ニュースバルの放射光光源の特徴となる軟X線領域に特化したXAFS(X線吸収微細構造)測定などの分析専用ビームラインです。
 物質や材料を構成する元素の化学状態や結合状態、隣接原子との距離などが解析できます。
 産業用と銘打っていますので、測定代行受託も行っており、積極的にアピールしているようです。

オマケ

 SPring-8が共用で大型の利用施設であるのに対して、こちらはかなり大学の実験室の延長の雰囲気が濃いイメージでした。実際にプレゼンターは担当をしている教授の方々などが解説をして下さっていましたし、物の置き方が大学の実験室さながらで(笑)。

施設の内の物置
 施設の内の物置

 理研やその他の企業を含めた専用・共用ビームラインを運営し、かっちりとした運営を行っているSPring-8に対して、いろんな事をチャレンジして行く場所としての学際領域的場所として提供されているニュースバルの差だと思われますが、このグチャっと感に妙に親近感を覚えるのはどうしたものかと。

科学の光で照らそう(その3)

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 SPring-8の花形、蓄積リング棟とビームラインです。

ビーム入射点
 電子ビーム入射点
 手前側が蓄積リングで向こう側がシンクロトロンからのビーム

 シンクロトロンからSSBTを経由してやってきた電子ビームはここで蓄積リングに入射されます。

 蓄積リングという名前が付けられていますが、基本はシンクロトロンと同じで偏向電磁石と加速空洞などから構成されていて、シンクロトロンとの違いは放射光を取り出すためのアンジュレータなどが所々に挿入されている点です。
 蓄積リングは一周1435.95mあり、その電子ビームを通すパイプ中をほぼ光速に近い電子が周回します。
 SPring-8ではバンチ(電子塊)をRFパケットと呼んで管理しており、その総数は最大で2436個置くことができます。これらのRFパケットは非常に精密に制御された同期システムにより、絶対番地管理が可能となっており、任意のパケット位置にパケットを挿入する事もできるそうです。

加速空洞
 加速空洞

 リングを周回する蓄積電子の寿命は様々な要因で決まります。周回するだけでビームを曲げられるのでそこでエネルギーが放射光になりますし、ビームライン向けアジュレータによる放射光などでもエネルギーは失われます。それらを回復し8GeVを維持回復するために蓄積リングでは4カ所の加速空洞が設置されています。共鳴周波数はシンクロトロンと同じく508.58MHz(正確には508579360Hz)です。

 ここで光速をこの周波数で割ると波長一つの長さが算出できます(58.95cm)。RFパケットはこの間隔で置かれ、2436個置けるとありますから2つの数字を掛けると1435.95mとなり、これが蓄積リングの周長となります。蓄積リングの大きさはこの加速空洞で使われる高周波の周波数を元に設計・算出されています。実際の大きさは建設費用との兼ね合いになりますが。
 ちなみに、シンクロトロンや蓄積リングでの8GeVで加速されている電子の速度は光速の99.9999998%だそうです。

アンジュレータ
 挿入光源(アンジュレータ)
 近接磁場は0.5mT(ミリテスラ)
 クリップやペースメーカー殖込みをしていると近寄れない

 蓄積リングでは直線に進む電子を曲げないと周回するリング軌道を保てませんので偏向電磁石を使います。この偏向電磁石により電子の進行方向が曲げられると、シンクロトロン放射により赤外線・可視光から硬X線までの幅広いスペクトルで放射光が接線方向に出てきますので、そこをビームラインとします。

 また蓄積リングでは直線部分があり、そこに挿入光源(ID)としてアンジュレータが設置されています。アンジュレータからは比較的スペクトルの狭い範囲で偏向電磁石よりも輝度の高いX線が放射され、研究に活用されます。

 挿入光源として6mのアンジュレータが34基、長尺のアンジュレータ4基、ウィグラーを含む偏向電磁石によるラインが24基と全部で62本のビームラインが設置されています(計画・建設中を含む)。
 うち、26本が共用ビームラインとして利用可能。専用ビームラインも一部が産業用専用ビームラインとして複数の利用者に提供しています。

アンジュレータの磁石
 アンジュレータの磁石部

 ご覧の用にアンジュレータは周期的に磁極を反転した磁石が並べられており電子の通路に垂直方向の交番磁場を生成します。ここを電子が通過すると磁場により軌道が水平方向に蛇行することで放射光が発生します。きわめて指向性が強く、ウィーグラーや偏向電磁石と違い、広いスペクトルを持たずに基本波とその整数倍の高調波成分を含む準単色光が放射されます。
 この放射光をビームラインに導いて、この蓄積リングエリアの外にある測定機器や実験機器で利用するのです。
 SPring-8では設計時に設定された長い直線部分(30m)に後から27mの長尺アンジュレータが設置され、通常のアンジュレータ(4.5m)よりもさらに数倍輝度のある放射光を得る事ができるようになっています。
 使用されている磁石は永久磁石でネオジウム−鉄ーボロン系の異方性焼結磁石で世界最強の永久磁石だそうです。

閉鎖扉
 閉鎖扉

 蓄積リング稼働中は強いX線が飛び交っているため、それを遮蔽するために蓄積リングエリア出入口の扉は写真の様に分厚い扉になっています。なにせ医用レントゲン写真のX線管からでるX線の強さの100万倍以上の輝度があります。漏れ出しても困りますし、カンタンに開けて入る事が出来ても困るため、こんなに分厚い扉となっています。

 扉の後ろにチラと自転車が見えていますが、実はこれは構内移動用の自転車。
 なにせ直径228m、蓄積リングで一周1436m近くあります。歩いて移動していると時間も体力も無駄に消費するため、構内では自転車が大活躍なのだそうです。
 構内移動は自転車で!てなこともアナウンスしても面白かったのではないでしょうか。

構内電話
 構内電話

 蓄積リングエリア内にある構内電話ですが、ご覧の通り黒電話(600型電話機)。
 X線の嵐の吹き荒れる中、現在のようなインテリジェントな電子回路満載の電話では持たないため、アナログ回線のための単機能電話を設置しているそうです。何せ、受動素子ばかりで構成されているので、そもそもが故障知らず。電話線からの供給電力で動作するため電源も要らず。まさにこのような特殊な場所にはうってつけと言えるでしょう。もっとも、アンティーク電話として市中では高い値段で売られている場合もあるようですが。

実験ホール
 実験ホール

 ビームラインから取り出された放射光を外部の実験機器で実験する設備が置かれているのがこの実験ホールです。
 共用のビームラインや管理用のビームラインも含めて現在62本のビームラインがこのように外に引き出されて利用・運用されています。

設置機器
 設置機器
 これはリガクのイメージングプレートX線検出器

 写真は実際にビームラインBL03XU(フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合体が利用)の第二実験ハッチに設置されていたリガクの単結晶X線回折装置であるイメージングプレートX線検出器のR-AXIS。たんぱく質などの高分子結晶にX線を照射して生じた回折像を元に結晶の分子構造を解析するための装置です。
 構造物性や、成型品の変形機構の解明などの目的に設置されています。

サーバラック
 サーバラック
 写真はSACLAの中にあったサーバ

 広大な敷地に散在する設備類をそれぞれ現地で制御したり観測したりしているとあまりにも移動の無駄ですので、基本的に全てリモートで制御しネットワーク経由でデータ収集を行うようになっています。
 各施設のあちらこちらにサーバがあり、それらを用いてデータのやり取りなどを行っています。

中央制御室
 中央制御室
 これはメインパネル前
 実際は施設ごとの独立したモニタがずらっと別に並んでいる

 収集したデータや機器の制御、状態監視などはこの制御室で全て行います。
 実際に蓄積リングへ電子が注入されて運用開始となると最長で1カ月程度も連続運転を行いますので、その間は交代制の24時間態勢で運用を行います。

 当日は制御室のメインディスプレイパネルの前で白衣やSPring-8の作業着の他、法被(高輝度放射光施設と襟口に染め抜きのある特製法被)を着て記念撮影をさせてくれていました。
 白衣というのは科学者のイメージのステレオタイプなのでしょうが、化学・医学・生物の実験時位ではないでしょうか。SPring-8ではどちらかというと作業着の方が合っているような気がしますが。

 SPring-8の意外な用途に地震の震動の波や太陽・月の朝夕効果による地球の変形に起因する蓄積リングの周長の変化が加速器の周波数の補正という数値になって表れる現象を観測しており、地球科学や宇宙科学の分野での応用が期待できるのではないかという研究報告もあるようです。
 カミオカンデが測定した超新星ニュートリノがニュートリノ天文学を拓いたように、蓄積リングを周回する電子ビームが精密測定器として新たな科学の観測手段を拓く事もあるやもしれません。

オマケ

 今回、SPring-8の一般公開日で昼食をとるのに施設内の食堂棟にあるカフェテリアで頂きました。通常はプリペイドカードを購入して清算なのですが、一般公開のため事前に食券を購入する形式です。
 私は流石に遠慮して注文できませんでしたが、隣の席の女子高生と思しきグループ(女子会?)が全員お子様ランチを注文していて、羨ましい状態。なにが羨ましいかというと、

お子様ランチ
 お子様ランチ(現物見本)
 ハンバーグ、エビフライ、コーン、ブロッコリー、ポテトフライ、ケチャップライス

 お子様ランチと言えばいろんな品がチョコチョコと入って大人の目から見ても楽しげなのですが、一番の特徴はご飯ものに刺さっているお子様ランチのシンボルとも言える旗。まあ、日本の国旗だったり、百貨店の食堂であれば百貨店のロゴだったりするのですが、ここはなんと新造施設であるXFEL(自由電子X線レーザー)のSACLAのロゴの入った旗が刺さっていました。
 まさに、この日、この場所でしか食べる事の出来ないお子様ランチです。

トレー返却所
 トレー返却コーナー

 食後の食器およびトレーはこの場所で返却します。
 この緩いカーブといいメカメカしい雰囲気がなんとなく蓄積リング棟を想像させるのは気のせいでしょうか。単なる設備の問題ではないような気がして仕方がありませんが(笑)。

 ビームラインを止め、各所の運転を止め、説明用の展示物を準備し、来場者のためのディスプレイ類やイベントを用意、さらには当日の交通整理など所員を含め、関係諸子の方々の甚大なる労力により快適に施設類を見学することができました。
 この場を借りて御礼申し上げます。
 時間切れで見る事が叶わなかった場所が多数あり、次回の公開でじっくり拝見させて頂ける事を期待しております。

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