心は脳の想像の産物か

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 脳と心、互いに不可侵な領域があるように思えます。と、思っているのは脳なのか心なのか。

脳が心を生み出すとき
 脳が心を生み出すとき サイエンス・マスターズ 11
 スーザン・グリーンフィールド著 新井 康允訳 草思社刊
 原題「The Human Brain: A Guided Tour」Susan A. Greenfield
 1999年4月8日 第1刷
 ISBN 4-7942-0875-8

 日本語のタイトルに惹かれて読んでみたのですが、英語の原題の示す内容の方が(当たり前ですが)適切な書籍です。

 著者は専攻は薬理学だったこともあり、薬物の脳に及ぼす生理作用についての記述はかなり力が入ってはいます。全体として個々の組織や部位については豊富に事例などを挙げて書かれている反面、「脳」と「心」という哲学的・観念的な見方はごく一部にとどまっています。

 全体的に脳の研究における歴史的記述・経緯の説明が多いため、「現在こんな事象を調べる事により脳の真実に迫っている」のような当時の最先端の迫力を感じる記述や、脳の高次機能に対する記述が少ない点がちょっと残念です。
 発行年月よりかなり前に放映されたNHKスペシャルの特集番組「驚異の小宇宙 人体II 脳と心(1993)」を見てしまった人には、物足りなさを感じさせる内容かもしれません。

 翻訳者のミスか原書のミスかは確認していませんが、PET(陽電子放射断層撮影法)の記述で陽子と陽電子が混同されている点があります。
 「放射性原子は高速で陽子を射出する不安定な核を含んでいる。陽子は電子に似た素粒子だが、電子とは違って陽電荷をもっている。ブドウ糖か水の分子に取込まれた放射性の酸素原子が、静脈内に注射されると、この放射性の標識物が、血液によって脳内に運ばれる。射出された陽子は、脳内のほかの分子中の電子に衝突し、たがいに消滅する。その結果、噴出したエネルギーはガンマ線となる。」p.48より引用
 PETの原理は11Cや15Oなどの放射性同位体を用い、これらの陽電子崩壊により放出された陽電子が電子と衝突して対消滅する時に互いに反対方向に放射されるガンマ線(光子)を検出するので、この部分は誤植・誤訳・原書の間違いのいずれかでしょう。

 とはいえ、「脳」というシステムを広く網羅的に解説されている点は1冊目の入門書としては良いのではないでしょうか。まさに脳のガイドツアーです。
 ただ、私としては訳者の研究対象である脳の性差の研究の方が興味が出てしまいました(笑)。

コメント(2)

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ご無沙汰してます
中央図書館へよくお出かけになるのですか?
以前、市内だったので、休みになると私もいってました
こないだ、国立国会図書館(京都?)のなどと言うところに
行きましたが、規模的には、中央図書館に負けてましたね。
 まったく話題は、変わりますが
ロームがチップコンデンサを完全に撤退したのご存じでした?
パスコンなどは、ロームが多いので切換が大変ですわ。
 では、また。

OTAKEさん、コメントいただきありがとうございます。

以前は二輪で通勤していたので良く仕事を無理やり(笑
)早く終わらせ、寄っていたのですが乗らなくなってからは、とんとご無沙汰です。
もっぱら近所の図書館引取り指定でウェブから予約取り寄せしています。そのため複数の館で蔵書がある場合はどの館の本がくるかわからないのが楽しみです。

ローム、チップコンデンサ撤退ですか。○ラタが寡占状態なのでしょうかねぇ。特性や耐圧・容量・形状の選択を迫られるので代替作業の心中お察しします。

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このページは、なんぎが2007年1月27日 10:16に書いたブログ記事です。

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